土曜日の告白

2_地獄の3か月

家族を捨てるつもりですか?

前日のLINEで、私は夫にこう聞いた。

「家族を捨てるつもりですか?」

夫から返ってきたのは、短い返事だった。

「家族を捨てるつもりはありません。」

その言葉を見たとき、正直ほっとした。
家族を捨てるつもりはないらしい。

私は、嫉妬しているわけではなかった。
女がいたとしても、「やっぱりか」という気持ちのほうが強かった。

もし正直に話してくれて、詫びてくれたなら。
私は許そうと思っていた。

人間だから、そういうこともあるのかもしれない。
だからこそ、嘘だけはついてほしくなかった。

そして土曜日

私たちはダイニングテーブルで向き合って座った。
夫はうつむき加減で、話しにくそうにしていた。

いよいよ不倫の告白か。

私は覚悟を決めて言った。

「では、どうぞ。お話しください」

すると夫は少し間を置いてから言った。

「映画のことだけど、それはごめん。映画には行きました。映画に行ったけど、それだけです。もう行くことはありません。」

……は?

まさかの答えに、私は拍子抜けした。

「そんなわけないでしょう。出張だって嘘ついて、わざわざ映画に行くって、手土産まで持って?
なんでそんな嘘つくの?正直に言ってよ」

夫は首を振った。

「だから、そういう関係じゃなくて。映画に行きたかったから、一緒に行っただけ。」

いやいやいや。

あなた、こんな映画絶対に見ない人じゃない。

「おかしいよ。正直に話してよ。別に正直に言ってくれたら、それでいいんだよ。
そういうこともあると思うから、嘘だけはつかないでよ」

そう言っても、夫はかたくなに浮気を認めなかった。

私はまったく納得できなかった。

「じゃあなんで映画の半券を置いてくの?
わざと落としていったんじゃないの?」

「いや、全く気づいてなかった。」

私はさらに問い詰めた。

「最近だって、土日は朝から晩まで“ジム”とか“サウナ”とか言って、ずっといないじゃん。
それ、浮気相手と会ってたんでしょう?」

夫はすぐに否定した。

「違う。ほんとにジムとサウナに行ってた。」

「それにしては、毎週土日ずーっといないじゃん。」

言いながら、私はだんだん腹が立ってきた。

「それに平日だって、家のこと何もしないでさ。
洗濯物ひとつ干さないし、家のこと全部私がやってるじゃん。」

気づけば私は、映画の話とは関係のない、
日頃たまっていた不満までぶつけていた。

すると夫は少しイラついた様子で言った。

「じゃあ洗濯物、朝干すのやるよ!やればいいんだろ!」

その言い方に、私の怒りも一気に湧き上がった。

「あのさあ、お義母さんに毎月7万送ってるじゃん。」

夫は黙ったままだった。

私は続けた。

「なんで、私に何も相談なくそんな大金送るの?
7万の根拠は何よ?」

生活費のことも、家計のことも、
家のことは全部私が回している。

それなのに、
毎月7万円という大きなお金を
私に何の相談もなく送っている。

私はずっと納得できずにいた。

すると夫は少し強い口調で言った。

「母親は3月で仕事を辞めたんだから。
俺の母親なんだから、金送るのは当然だろう。」

その言い方に、私はさらに腹が立った。

いや、だから、なんで7万なのよ?

うちだって、これから大学生になる子どもがいる。
これからどれだけお金がかかるか分からない。

「年金はどうなってるの?
義父さんの遺産は?(あるわけないか)
それに、あなたの弟が一緒に住んでるじゃないの。
その弟はどういう分担になってるのよ?」

矢継ぎ早に聞いたけれど、
夫はその点については

「……」

何も答えなかった。

ただ一つ言ったのは、

「親に金を送るのは当たり前のことだ。」

それだけだった。

そして、

「お前の実家に送る必要があるなら、送ればいい。」

そう言った。

私は思わず言い返した。

「うちの両親は、金銭管理きちんとしてるから。
私が送らなくても、ちゃんと生活できてるの。」

頑なに浮気を認めず、
「ただ映画に行っただけ」と言い張る夫。

その態度に腹が立った私は、
普段から心の中に溜まっていた不満までぶつけてしまっていた。

すると夫は突然こんなことを言い出した。

「俺は、子どもたちが成人して学校を卒業するまでは責任がある。
それまでは離婚するつもりはないけど…」

少し間を置いて、

「そのあとは、どうするかわからんから。」

その言葉を聞いた瞬間、
私の中で何かが音を立てて崩れた。

私はただ、
正直に話してほしかっただけなのに。

そしてこのあと、
私はさらに信じられない話を聞くことになる。