お金の話
その頃、夫は言い出した。
「本格的に株をやりたい」
もともと少しは持っていたけど、
今度は「有料セミナーに行く」と言う。
有料?わざわざ?いくらなの?
「いいじゃないか、俺の金で行くんだから」
――それ以上、触れるなという空気だった。
私は、踏み込めなかった。
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同じ頃、変化があった。
あんなに服に無頓着だった人が、
急にブランド物を身につけるようになった。
ユニクロを着倒していた人が、
急におしゃれな服を選び出す。
JINSの眼鏡が、百貨店で8万円超えのものに変わり、
気づけばボッテガのサングラスまで持っていた。
――そのどれもが、
「夫が自分で選ぶもの」じゃなかった。
でも私は、考えないようにした。
気づかないふりをした。
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さらに、
カードの請が、1ヶ月で約50万円。
出張が多かったから、
「そういうものかもしれない」と自分に言い聞かせた。
夫は浪費する人じゃなかったし、
お金は任せてくれていた。
だから、信じていた。
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今思えば、
あの言葉も、あの変化も、あの金額も、
全部“点”だった。
でも私は、それを線にしなかった。
信じたかったから。
見ない方が、楽だったから。
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その信頼が、どう崩れたのか。
気づいたのは――
証拠を探し始めてからだった。

