GPSが夫にバレた夜。初めて見た感情むき出しの夫。

2_地獄の3か月

その日も、いつも通りだった。

夫のリュックに、GPSを仕掛ける。

1週間、見つからずにやってきた。

きっと今日もうまくいく。そう思っていた。

GPSは動きがあるたび、アプリに通知が来る。

通知が来るたびに位置を確認してしまう。

その日はなんとなく、動きに違和感があった。

夫が帰ってきた。

「ただいま」も「おかえり」もない、いつも通りの帰宅。

その夜、夫は家で食事をしたのだろうか。

今となっては、記憶もない。

わたしは家事をこなしながら、夫が風呂に入るのを待っていた。

風呂に入っているすきに、GPSをリュックから取り出す。

充電をして、翌朝また戻す。

それを1週間、繰り返してきた。

リュックから取り出したとき、決定的な違和感があった。

GPSは小さな四角いケースに入っていた。

中で開いてしまわないよう、テープでつなぎ目を1周ぐるりと留めていた。

そのテープの位置が、ずれている。

あれ? わたし、こんな留め方したかな?

心臓がバクバクと音を立てた。

まさか、バレた?

でも何も言ってこない。

さすがに何も言ってこないことはないだろう。

GPSをズボンのポケットにしまい、祈るような気持ちで、食器を洗い始めた。

夫が風呂から出て2階に上がって行った。

毎度のことだが、夫は自分のことが済めばすぐに寝る。

家事を手伝うことも、リビングで家族と話すことも、ない。

いつも通りの夜、のはずだった―。

血相を変えた夫が、キッチンに飛び込んできた。

引き出しという引き出しを、片っ端から開けていく。

「どこに隠した??」

「出せよ!」

「はあ? 何を??」

「とぼけるなよ!GPSだ!」

「そんなの知らない」

「ふざけるな!出せ!!」

夫の目は吊り上がり、怒りに震えていた。

23年の結婚生活で、こんな顔は見たことがなかった。

感情をむき出しにして詰め寄ってくるのも、初めてだった。

夫は家じゅうの引き出しを開け、2階の寝室へ向かった。

わたしの化粧台の引き出しも、ヒステリックに全部開けていく。

「ありませんよ」

わたしは努めて冷静に言った。

「早く出せ!!俺はGPSを仕掛けるようなやつとは一緒にいられん」

「原因を作ったのは自分でしょう」

「女がいるのに認めないから、証拠を掴むしかないでしょう」

「女なんかいるわけない!GPSを仕掛けるような奴と同じ家に住めない!怖すぎる!」

「それはあなたがやましいから怖いんだよ。私はGPS仕掛けられたって全く問題ないよ」

「俺はもうお前とは無理だ。出ていく」

夫はその日のうちに荷物をまとめ、家を出て行った。

あっけないと思った。

なぜか1時間後、戻ってきた。

「親に話して、荷物を実家に置いてきたから。明日出ていく」

「実家?それは、どうぞ」

嘘だ、とすぐにわかった。

こんなときに頼れる親ではない。夫が泊まれるような家でもない。

夫が行く先は——確実に、女のところだ。

明日は2人とも仕事がある。

家を出ていくのは、仕事が終わってからだろう。

わたしはポケットの中のGPSに、そっと手を当てた。

今度は、車に仕掛けるしかない。

次回:「車に仕掛けたGPS