地獄の始まり③
気づいたら、夫はスピリチュアルにはまっていた
今思えば、あの頃からだったのかもしれない。
夫の様子が、少しずつおかしくなっていったのは。
当時、夫は会社の大きなプロジェクトに関わっていた。
毎日のように出張、深夜まで続く会議。
慣れない業務に追われ、心身ともに疲弊していた。
部下が次々と退職し、体調を崩す者もいた。
その責任を一人で背負い込んでいるようにも見えた。
顔色は悪く、酒の量は増え、
気づけばお腹だけがぽっこりと出た体型になっていた。
眠りも浅く、常に疲れている様子だった。
今ならわかる。
あのとき夫の中には、
確実に“隙”ができていた。
そんなある日、夫が言った。
「○○と俺が今生きてるのは、チャネリングの先生のおかげなんだ」
は?
一瞬、言っている意味がわからなかった。
「ゴールデンウィーク、越せないって言われたんだよ。だから遠隔シャワーを受けた」
遠隔シャワー?
聞き慣れない言葉に、思考が止まる。
「遠隔シャワーをやってもらってる時間さ、俺、外で散歩してたんだけど」
「足元に風が吹いたんだよね」
「すごいよ、あの先生。本物だわ」
夫は、どこか誇らしげだった。
「それって、遠くから何か…送るってこと?」
「そう」
「いくら払ったの?」
「3万。安いもんだよ。部下の分も出したし」
こいつ、正気か?
「命がもたないって、先生から直接言われたの?」
「いや、バーのママから電話があった」
バーのママ?
なぜ、その人が間に入るのか。
なぜ、その人が夫の連絡先を知っているのか。
疑問はあった。
でも、その違和感を
深く考えようとはしなかった。
今思えば、このときすでに
夫の中の“現実”は、
少しずつ別の方向へ向かっていたのかもしれない。
そして私はまだ、
その変化が、
この先どれほど大きな出来事につながるのか
まったく気づいていなかった。
次回予告
スピリチュアルと女の影


