最近はキャッシュレスが当たり前になり、現金を引き出す機会も減っていた。
お金の管理については夫を信頼していたこともあり、通帳の中身を細かく確認することはほとんどなかった。
そしてちょうど3人の子どもたちの学資保険満期分が入金されて口座の金額が膨らんでいたため、引落があったとしても埋もれて気づかない状態になっていた。
だが、夫の小遣い用の通帳を見たとき、私は言葉を失った。
慌てて、家計の通帳――夫の給与が振り込まれる口座を確認する。
毎月の給与振込額は、おおよそ20万円ちょっと。
これは、夫の小遣いを差し引いた後の金額だ。
これまで7万円だったはずの小遣いが、いつの間にか14万円に引き上げられていた。
当然、その分だけ家計への振込額は減っている。
それなのに、義母への仕送りは家計から7万送金するように変更されていた。
20万ちょっとの給料でさらにそこから義母に7万仕送りしたら普通なら家族5人暮らせませんが。
さらに、夫のカードが2枚。
それぞれ数万円ずつの引き落とし。
内容は飲食代やETCだろうか。使い分けはわからない。
家計からカードで数万ずつ使い。
それに加えて7万円(今は勝手に14万円)の小遣い。
――一サラリーマンとして、ずいぶん贅沢ではないか。
そう思いながらページをめくったとき、見慣れない引き落としが目に入った。
三〇住〇カード。
ここ数か月、毎月20万円台。
多い月は50万円を超えている。
給料を大きく上回る金額だった。
「……なに、これ?」
思い当たるとすれば夫の出張費の立替だ。
でも、会社からの入金はどこにも見当たらない。
もし20万円立て替えたなら、同額が振り込まれるはずだ。
それが、ない。
さすがに黙っていられなかった。
角が立たないように、できるだけ平静を装って、出勤前に食卓に座っていた夫に聞く。
「通帳を見たら、知らないカードで高額の引き落としがあって……私の知らないカードだから、不正利用かもしれない。三〇住〇カード。50万円も引かれてる。警察に届けたほうがいいと思う」
夫は少し考えてから言った。
「……それ、俺のカードかも」
「どういうこと?なんで50万も引き落とされるの?」
「出張の立替分」
「じゃあ、なんで会社から振り込まれてないの?」
「……会社で別の口座を作らされて、そっちに入ってる」
意味がわからなかった。
「なんで、入金される口座と支払う口座が違うの?
それなら、その口座の通帳とカードを渡して。支払いだけ家計っておかしいでしょ」
夫は少し苛立った様子で言った。
「金には手をつけてない。500万くらいある」
頭の中で何かが切れそうになった。
家計から支払って、入金は自分の“別口座”。
しかも、それを黙っていた。
本当は叫びたかった。
――ふざけるな。
けれど、私はぐっと飲み込んだ。
「……通帳とカード、ください」
夫は不満そうにキャッシュカードを差し出した。
「通帳は?」
「最初からもらってない」
――そんなこと、あるはずがない。

