女の情報は、ほぼそろった。
残っているのは、写真と勤務先だけ。
あと一歩。
でもその「あと一歩」が、遠い。
私は毎日、夫のクローゼットを捜索した。
新しい証拠が、どこかにあるはずだと信じて。
そんな中で見つけたのが、夫の通帳だった。
結婚当初に作った口座で、
夫の小遣いとして7万円や交通費等が会社から振り込まれるものだ。
夫は通帳記入をする習慣がない。
最後の記帳は、平成29年。
――7年間、放置された通帳。
私はATMへ向かった。
そして記帳ボタンを押した。
出てきたのは、
7年分の“合計記帳”と今年の4月から今日までの金の動き。
その一行一行を見たとき、
嫌な予感が、確信に変わっていった。
毎月7万円の小遣い。
それに加えて、年2回6万円の賞与。
――賞与については、10年ほど前から始まっていた。
私は聞いていなかった―
賞与分の6万円は、
夫が自分で会社に申請して、
この口座に入るようにしていたのだろう。
一言、相談してくれればよかった。
賞与の時に小遣いが欲しいと言ってくれれば、
いくらでも話し合った。
でも夫は、何も言わずに勝手に手続きをしていた。
その「黙っていた」という事実が、
何よりもショックだった。
さらに異変は、今年の4月から一気に加速する。
4月 1日 8万円
4月 9日 10万円
4月17日 11万円
4月21日 7万円
4月27日 10万円
たった1ヶ月で、46万円の引き出し。
カードの支払い分を含めると、
約55万円。
5月も同じだった。
43万円以上の引き出し。
1回で25万円おろしている日もある。
もう「小遣い」の範囲じゃない。
そして、もうひとつ気づいたこと。
夫は、自分の母親に7万円を送金していた。
――ああ、そういうことか。
最初は自分の口座から送っていたのだ。
でも翌月から、やり方を変えた。
家計の口座から、ネットバンキングで送る方法に。
そうすれば、自分の懐は痛まない。
支出はすべて「家計」になる。
いくら私が夫の給与口座の通帳とカードを管理していても、
名義人は夫。
お金は自由に動かせる。
――厄介すぎる仕組みだった。
そんな使い方をしていれば、当然こうなる。
4月当初100万円以上あった夫の小遣いの口座残高は、
6月半ばには10万円を切っていた。
そして、極めつけ。
6月。
小遣い14万円、賞与20万円の入金。
――金額が、倍以上に増えている。
夫は勝手に、
給与口座からこの口座へ振り込む金額を変更していた。
毎月14万円。
賞与時は20万円。
家計に入るはずのお金を減らし、
自分の口座に回す仕組みに変えていたのだ。
毎月50万円近い支出。
そりゃ足りなくなる。
だから増やした。
ただ、それだけの話だ。
でもその裏で、
何が起きていたのか。
私はもう、
見ないふりはできなかった。
そして今更ながら気づいた。
交通費がどこにも振り込まれていない。
あれだけの出張をしているのだから、相当な額になるはずだ。
家計の口座にも振り込まれている記憶はなかった。
いや、私の見落としかもしれない。
私は家計の口座も調べざるを得なかった。

