不倫疑惑の裏で発覚した隠し口座と529万円の残高

2_地獄の3か月

夫は観念したように、キャッシュカードを差し出した。
渋々、という言葉がぴったりの手つきだった。

当然だ。
家計口座から高額の出張費が引き落とされているのに、会社からの入金は別口座。

しかもそれが「隠し口座」なんて、まともに通る話じゃない。

それでも私は、2年もの間気づかなかった。

……いや、正確には違う。
気づかなかったんじゃない。気づかないようにしていた。

数か月前、ふと頭をよぎったことがある。
「こんなに出張に行っているのに、交通費はどうなっているんだろう?」

家計口座には入っていない。
それでも私は、それ以上考えるのをやめた。

夫に聞けば済む話なのに、あえて聞かなかった。
波風を立てないことを、無意識に選んだ。

そして、その結果がこれだ。


ありえない言い訳

夫は言った。
「会社から交通費専用の口座を作るように言われた」と。

……そんなこと、あるか?

仮に百歩譲って本当だとしても、
交通費を支払ったカードの引き落としが、なぜ家計口座なのか。

わざわざ家計から支払って、妻の知らない別口座に入れる。
それを「うっかり間違えた」で済ませるには、無理がありすぎる。


それでも一歩前進

それでも、キャッシュカードを手に入れた。
これは大きな成果だった。

正直、ここまで素直に差し出すとは思っていなかった。
いや、素直ではない。追い詰められ渋々差し出しただけだ。

夫は言った。
「500万くらいあるけど、手はつけてない」と。

その言葉を、信じるほど私はバカではない。

通帳を出さない理由。
それはもう、考えるまでもない。

「手をつけている」からだ。


残高照会

私は確認せずにはいられなかった。

ATMの前に立ち、カードを差し込む。
指がわずかに震えていたのを覚えている。

画面に表示された数字。

5,291,331円

一瞬、現実感がなかった。

でも次の瞬間、はっきりと思った。

「――ほ~う、ほんとにあるんだ」

間違いなくその時私はほっとしていた。