“社長”の会社を自分で調査した日|薄暗い建物に感じた、言いようのない不気味さ

2_地獄の3か月

わたしは、女のマンションから、”社長”の会社へ向かった。

地図上では、たった1駅。

でも、わたしにとっては全く知らない土地だった。

グーグルマップを頼りに、炎天下の中を歩き始める。

数分歩いただけで、汗が首筋を伝った。

「タクシーを使おうか」

一瞬そう思ったものの、すぐに打ち消した。

これからは、自分の収入だけで生きていかなければならない。

離婚を決意してから、お金のことばかり考えるようになっていた。

タクシーなんて贅沢だ。

そう思っていたのに、結局わたしは後ろから来たタクシーに手を挙げた。

乗り込んだ瞬間、冷房の風が体に沁みた。

運転手に住所を告げると、目的地まではあっという間だった。

ワンメーター。

「近いところ、すみません」

そう言って支払いを済ませ、車を降りた。

女のマンションとは、たった1駅しか離れていない。

なのに、空気が全く違った。

大通りを一本入ると、静かな住宅街。

セレブ感などどこにもない、ごく普通の街だった。

そして、目的地の住所に辿り着いた瞬間。

わたしは思わず立ち止まった。

これが……建設会社?

正直に言う。

最初に浮かんだのは、「怖い」という感覚だった。

建物は薄暗く、妙に閉鎖的で、人を寄せつけない空気をまとっていた。

まるで、ヤクザの事務所か、ラブホテルのようだった。

わたしが想像していた「建設会社」とは、あまりにも違っていた。

近づいて表札を確認する。

入口は2つ。

表札には、漢字二文字の会社名が3つ並んでいた。

黒いプレートに並ぶその名前は、どれもよく似た、重たい雰囲気だった。

別々の会社というより、同じグループの関連会社のようにも見える。

その並び方が、どこか秘密めいていた。

わたしは言いようのない不気味さを感じた。

わたしは急いでスマホを取り出し、写真を撮った。

この頃のわたしは、証拠になりそうなものを見ると、とにかく記録せずにはいられなかった。

周辺も歩いてみた。

どこにでもある住宅街だ。

でも、その建物だけが妙に異質だった。

夫は、こんな場所に出入りしているのか。

そう思いながら歩いていると、少し離れた場所に夫の車を見つけた。

おそらく、「建設会社」の駐車場なのだろう。

それも写真に収めた。

いったい、どこに住んでいるのか。

もしかして、この建物の中なのか。

あの異様な空気の建物の一室に、夫は暮らしているのだろうか。

頭の中に、夫が口にしていた「除霊」という言葉が浮かんだ。

この場所で、夫は”除霊”の儀式をしてもらったのだろうか。

そう考えると、背筋が冷たくなった。

結局その日、夫が実際に住んでいる場所までは突き止められなかった。

でも、ひとつだけ確信したことがある。

夫が関わっているのは、普通の「社長」ではない。

わたしは来た道を引き返しながら、静かにそう思っていた。

次回へ続く。
「不倫相手とスピリチュアルにはまった夫が、わたしに見せた別の顔」