【財産分与】何かに取りつかれたような夫の顔。娘が握っていた”不倫の決定的証拠”

2_地獄の3か月

財産分与の話し合いは、わたしの心を容赦なく削っていった。

そんな最悪の日々のなかで、思いがけない形で「夫の不倫の決定的証拠」が見つかった。

しかも、それを持っていたのは——娘だった。


財産分与の話し合いで見た、夫の変わり果てた顔

もともと、わたしは夫の顔が好きだった。

ひとめぼれだった。

特に笑ったときの、あの優しい表情が好きだった。

けれど、その面影は、もうとっくに消えていた。

向けられるのは、敵意ばかり。

目つきも言葉も刺々しく、まるで別人だった。

何かに取りつかれているように見えた。

1回目の話し合いから、激しい口論になった。

建設的な話し合いなど、到底できる状態ではなかった。

LINEもメールも、同じだった。

売り言葉に買い言葉。

やり取りのたびに罵り合いになり、わたしはどんどん追い詰められていった。

夫から通知が届くたびに、心臓が跳ねた。

何が書かれているのか怖くて、メッセージを開くまでに何時間もかかった。

食欲もなくなった。

眠れない日が続いた。

気づけば、3キロ痩せていた。

洋服を買いたいとも、美味しいものを食べたいとも思わない。

心はずっと濃い霧の中にいるようで、目の前の景色も、未来も、何も見えなかった。

妻がやつれていく一方、夫はどんどん派手になった

一方の夫は、違った。

家に来たとき、見たこともないジャケットを着ていた。

新しい財布。

新しい腕時計。

長年ユニクロばかり着ていた人とは思えないほど、どんどん派手になっていった。

娘が見せてくれた、60万円のレシート

1回目の話し合いが終わったあとだった。

娘が興奮した様子で、わたしのところへやってきた。

「ママ、パパ財布変わってたよ! しかも気持ち悪い“スピってる”財布! めちゃくちゃ高い買い物もしてる! ヤバい!」

そう言って見せてくれたのは、夫の新しい財布とレシートの写真だった。

夫がわたしと話している間に、こっそり撮影したらしい。

子どもたちも、父親の異変に気づいていた。

夫はもともと、ヴィトンの財布を使っていた。

それが、真っ青な蛇柄の、とてつもなく悪趣味な財布に変わっていた。

なんで、よりによってこんな財布なの——。

さらにレシートを見て、驚いた。

ヤマダ電機で、約60万円。

しかも日付は、前日。

夫が家を出て、まだ数日しかたっていない。

家電に、60万円?

ひとり暮らしの仮住まいに?

何を買えば、そんな金額になるのか。

しかも支払いは、家計口座から引き落とされるクレジットカードだった。

わたしは呆れた。

そして、恐ろしくなった。

家計のキャッシュカードは、わたしが持っている。

けれど夫は、ネットバンキングもクレジットカードも使える。

その気になれば、いくらでもお金を動かせる。

こうしている間にも、財産が減っていくかもしれない。

早く決着をつけなければ。

その焦りだけが、大きくなっていった。

盗聴を恐れ、大事な話は車の中で

夫が帰ったあとも、不安は消えなかった。

盗聴器を仕掛けられているのではないか。

どこかにカメラがあるのではないか。

今思えば、正常な精神状態ではなかったと思う。

それほど、追い詰められていた。

家の中で子どもたちと話すことさえ、できなかった。

どこかで聞かれているかもしれない。

そんな恐怖があった。

だから大事な話は、いつも車の中でした。

あの日も、そうだった。

娘は、夫とわたしが大声で言い争っていた声を聞いていたはずだ。

ちゃんと説明しなければと思った。

どんな話し合いをしたのか。

なぜ口論になったのか。

正直に話した。

すると、娘が言った。

「パパ、ヤバいね」

「完全にパパが間違ってるじゃん。慰謝料もらおうよ」

「取りたいよ。でも、証拠が足りないんだ」

わたしは、ため息をついた。

「写真がないの。相手の女の顔もわからない。決定的な証拠があれば……」

すると娘が、何かを言おうか迷うような顔をした。

「写真?」

「・・・写真なら、あるよ」

意味がわからなかった。

「え?」

「パパが朝、歯磨きしながらスマホを見てて、そのまま置いて洗面所に行ったことがあったの」

「そのときチャンスだと思って、パパのスマホの画面を私のスマホで撮ったの」

頭が、真っ白になった。

カーナビ履歴は、嘘をつかなかった

娘は自分のスマホを操作して、画面を見せてくれた。

息が、止まりそうになった。

そこには、何枚もの写真があった。

夫と、見知らぬ女が並んで写っている。

浴衣姿で、旅館の食事を楽しむ二人。

女が、夫にしなだれかかっている写真。

真っ赤なワンピースの女と、観光スポットで肩を寄せ合う写真。

短期間のうちに撮られたと思われる写真が、何枚も、何枚も出てくる。

しかも、その場所には見覚えがあった。

以前、車のカーナビ履歴で見つけた観光スポットだ。

パワースポットと呼ばれる場所に、毎週のように通っていた。

こんなところに、夫がひとりで行くはずがない。

カーナビの履歴は、嘘をつかなかった。

夫はほぼ毎週、女と出かけていたのだ。

わたしや子どもたちを連れて出かけてくれたことは、ほとんどなかったのに。

しかも、その場所のひとつは、夫が「会社の人たちと泊まりで行く」と言って出かけた観光地だった。

そこは、昔、夫が単身赴任で住んでいた場所だ。

わたしも幼い子どもたちを連れて訪れた、家族の思い出が残る場所だった。

そして、旅行の日付を見て、思い出した。

あの頃、夫はチャネリングの先生から「このままだと命がもたない」と言われていた。

その言葉を真に受けて、3万円の“遠隔シャワー”まで受けていた時期だ。

でも、写真の夫は元気そのもの。

観光地を巡り、旅館に泊まり、女と旅行を楽しんでいる。

「命がもたない」と言われた人間にしては、ずいぶん活動的である。

今思えば、心配していた自分が馬鹿みたいだ。

それにしても、初めて見た女の顔。

もっと美人だと思っていた。

正直な気持ちを言えば、

「これなら、わたしの方が、まだマシなんじゃない?」

そんな感想すら、浮かんだ。

真っ青や真っ赤の、ド派手なワンピース。

バーのママらしいというか、やはりどこか、スピリチュアルな雰囲気が漂う女だった。

娘が、ひとりで抱えていた証拠

それよりも、気になったことがあった。

「この写真、いつ撮ったの?」

娘は答えた。

「6月くらいかな」

わたしは、言葉を失った。

わたしが夫の不貞に気づく、2か月以上も前だった。

わたしが、何も知らなかった頃。

娘はすでに、真実を知っていたのだ。

父親の、不倫の証拠を。

誰にも言わず。

ひとりで、スマホの中に抱えたまま。

大学受験という、人生の大切な時期に。

娘は、どんな気持ちだっただろう。

どれほど、苦しかっただろう。

そう考えた瞬間、胸が締めつけられた。

苦しかったのは、わたしだけじゃなかった。

一番つらかったのは、この子だったのかもしれない。

しかも娘は、写真を見せながら、小さな声でこう言った。

「でも、パパには言わないでね」

「まだ……パパに、嫌われたくないから」

不倫の証拠を握っていても、娘は父親を、嫌いになりきれていなかった。

その健気さが、よけいに胸に刺さった。

ごめんね。

そんな言葉しか、出てこなかった。

「この写真、全部ママに送ってくれる?」

「これ、本当に大事な証拠になるから」

「〇〇のおかげで、勝てるよ」

娘は、ほっとしたように笑った。

「ほんと?」

「よかった」

その笑顔を見た瞬間、わたしは——絶対に負けられないと思った。